玄関先の石段の隙間から、小さなお花が咲きました。 すごくきれいだったのでガダラルさんにあげようと思ったら、ガダラルさんはその日帰ってこなくて。次の日の朝に帰ってきたんですけど、その時もうお花は枯れちゃってました。せっかく咲いたと思ったのに、ちょっと残念です。 お花はしょうがないですけど、ウィンダスよりも寒くないはずなのに風がいっぱい吹くアトルガンの冬が、ようやく終わったみたいです。昨日遊びに来たミリ様がここの家のおかずが立派になったら春が来たなって思うって言っていましたけど、塩漬けの魚やお野菜で食事を作ることが確かに減ってきた気がします。こういうのを春っていうのなら、まだ寒いですけどみんなにとっては春になったっていうのかもしれませんね。 そちらはもう雪が溶けましたか? 東の国では雪が家を潰すくらい降るってガダラルさんが前に教えてくれたので、そんなに降ったらお婆ちゃまが潰れてしまいそうで、なんだか少し心配になってしまいました。でも、もう春になったから大丈夫ですね。 そういえばこの頃ガダラルさんがお仕事の帰りに、見たことのないお野菜や果物をガダラルさんが買ってきてくれるんです。春になって色々な国から色々な物が市場に入るようになったので、毎日買い物するのが楽しいみたいですけど。それを渡される私は、何を作ればいいのか毎日すごく考えるんです。昨日は煮込みにしたから今日は炒めてとかすごくすごく考えるんですが、そういうお野菜に限ってあく抜きが必要だったりするんですよね。 知らない野菜とかを料理するのはすごく大変です、お婆ちゃま…… この頃はお仕事がすごく忙しいそうでルガジーン様はあまり家に来ません。 ガダラルさんはほんの少しだけ寂しそうですけど、私は嬉しいような寂しいような変な感じです。ルガジーン様は大好きですけど、私が寝てから二人で仲良くしているのはちょっとだけ悲しいです。だけど三人でご飯を食べないとなんだかへんな感じがしますし、でも二人だとガダラルさんが私といっぱいお話ししてくれるし。 気持ちがぐるぐるして、どうすればいいのか全然わかりません。 この間よく家に来る不滅隊の人にその話をしたら、無理矢理気持ちに答えをつけることはないんじゃないかって言われました。気持ちがぐるぐるしたり、どうしていいかわからない時があっても、それも後で楽しい思い出になるからって。 こんな気持ちが楽しい思い出になるかどうかはわかりませんけど、その人から今度気分転換に一緒に遊びに行こうって誘われました。バストゥークに一緒に行った時から色々話すようになっていたんですけど、男の人に誘われたのは、はじめてです。 ガダラルさんに言ったら断れって言われそうなので内緒にしてますけど、明日の朝市場の前で待ち合わせをしています。まだちょっと寒いのでガダラルさんにもらった外套を着て、ちょっとだけおしゃれをして行こうと思っています。 すごく楽しみです、お婆ちゃま。 どんなことをしたのか、今度の手紙に書きますね。 それじゃあお婆ちゃま、暖かくなってきたからって薄着をしないで、体に気をつけて過ごしてください。 |
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