そちらは寒いですか、お婆ちゃま。
 アトルガンもすっかり寒くなって、私は毎日震えながら朝の支度を始めています。ガダラルさんは何日か寝たらすぐに元気になったんですけど、しばらく家でお仕事をすることになったみたいで、毎日毎日いっぱいの書類とにらめっこしながらお仕事をしています。苦手だからやりたくないってガダラルさんはずっと言っています。でも遊びに来てくれるナジュリス様やミリ様が言うには、できるのに面倒くさがってなにもしないだけみたいです。ルガジーン様も、これが一番ガダラルさんには効く罰だって笑っていました。
 ガダラルさんも文句は言っていますがちゃんとお仕事しているのは、罰だからってわかっているからなんだと思います。でも体がなまるって、時々庭で大きな鎌を振って稽古したりしています。ルガジーン様も来たときにはガダラルさんの相手をしてくれていて、二人ともとても楽しそうに喧嘩しているみたいです。楽しく喧嘩するってとても変なんですが、一緒にいるだけでとても楽しそうなんですよね。ガダラルさんは口うるさいし色々と面倒だって怒ることもあるのに、すぐに仲直りできるのはいいお友達だからだと思っていたんです。


 えっと、星芒祭がこの間終わりました。
 いつもは夜になると外に出るのが怖いアルザビですけど、星芒祭の時だけは街がきらきらとしていて、いつもは夜に外に出ると怒るガダラルさんも全然怒りませんでした。あ、そういえばお婆ちゃま、ガダラルさんにクリスマスのプレゼントをもらいました。それとはじめて皇民街区に連れていってもらいました。今までずっとアトルガンの国は賑やかで活気があって、でも寂しい感じのする街だなと思っていたんです。でも皇民街区はすごく立派で道を歩いている人が静かで、落ち着きすぎてあまり長くいたくない街でした。ガダラルさんも本当ならここに家を持つべきらしいんですけど、ガダラルさんはこんな物価の高いところで暮らしたくないので、人民街区に住むことにしたそうです。露天の物売りさんもいませんし、果物もすごく値段が高くて、確かにここに住んだらお金がいくらあっても足りません。
 何か買ってくれるってガダラルさんが言ってくれたので新しいスカーフか髪留めを買ってもらおうかなと思っていたら、なぜだかルガジーン様がやってきました。ガダラルさんに聞いたんですけど待ち合わせをしていたわけじゃなかったみたいで、ガダラルさんも本当に驚いていました。
 それからが本当に、とても大変だったんです。
 ルガジーン様は変なおもちゃを買ってくれようとするし、それを私とガダラルさんで断ろうとするんですけど、ルガジーン様は全然聞いてくれなくて。しょうがないのでガダラルさんが私を抱えて、走って逃げたんです、ガダラルさん私のこと頭が大きい割に重くないって言ってくれましたけど、なんだか全然誉められていない気がします……
 それからは普通にガダラルさんと二人で買い物をしました。私はガダラルさんに綺麗な絹のスカーフを買ってもらって、私も家に帰ってからガダラルさんにプレゼントをあげました。お婆ちゃまが昔教えてくれた、木の実のお守りです。アトルガンには使える実がなる木が生えていないので、船でマウラまで行ってる行商人のおじさんに頼んで手に入れてもらいました。せっかくバストゥークまで行ったんだから、その時に拾ってくれば良かったんですけど、すっかり忘れていたんです。ガダラルさんはすごくびっくりしたみたいですけど、すごく喜んでくれました。それから二人でたくさんのごちそうとケーキを食べたんですけど、ガダラルさんが何度もなんでローストの作り方を知ってるのかわからないって、困っていました。自分で作ったのにわからないなんて、そんなことあるんですね。
 ガダラルさんが時間をかけて飾り付けてくれたお庭の木も、他の家よりずっと綺麗に光っていました。ルガジーン様はごちそうを食べ終わった頃に来てくれて、それから三人で夜の街を散歩して私の星芒祭は終わりました。
 寝る前にガダラルさんにお礼を言いに行こうと思って、いつもの木に登ったんですけど、ガダラルさんはとても忙しそうだったので、そのまま部屋に戻って寝ました。


 私、これからちょっとルガジーン様を嫌いになれそうです……




 お婆ちゃま、一緒に入れてあるのは、アトルガンで今人気のある香水だそうです。すごくいい匂いがするので、お婆ちゃまにプレゼントします。まだまだ寒いですけど、こちらは少し風が優しくなってきた気がします。もうちょっとだけ我慢すれば春だと思って、この寒い季節を乗り切ろうと思います。
 それではお婆ちゃま、また手紙を書きますね。