アトルガンはあまり雪が降らないそうです、お婆ちゃま。


 ガダラルさんの家に戻って、荷物の片付けをしてからこれを書いています。この間は久しぶりにお婆ちゃまに会えて嬉しかったです。でもお婆ちゃま、少し痩せたような気がします。おいしいものをいっぱい食べて、いつまでも元気でいてくださいね。私は集落に帰れないのでお婆ちゃまといつも一緒にいられないですけど、いつもお婆ちゃまのことを心配しています。

 お婆ちゃまと別れてから、私はあちこちを回りました。初めてサンドリアにも行きましたし、バストゥークの鉱山の視察もしました。私はあまり役に立ちませんでしたけど、色々な物を見ることができたと思います。



 それから……こんな事を書いても信じてもらえるかわからないんですけど。

 過去の、水晶大戦の頃の時代に行きました。私たちがジュノについた時、生きている口みたいな不思議な物があちこちにできていると街が大騒ぎになっていて、私たちも見に行くことにしたのが色々なことの始まりでした。
 それからがもう大変で。いきなり20年くらい前にとばされて、どうしていいかわからないのであちこち歩いていたら、バストゥークの人たちに助けられてしまいました。大きなガルカの人たちばかりだったんですが、その中に昔のザザーグ様がいてとてもびっくりしました。なぜだか私のことを知っていて、だけど私のことをお婆ちゃまの名前で呼んでいて。最初は昔のお婆ちゃまと間違えているんだと思ったんですけど、20年前のお婆ちゃまが私と同じくらいの年で同じような見た目をしているとおかしいはずなんです。どうしてなのかずっと考えていたんですけど。もしかしたら未来の私はもう一度過去に行くことになるんじゃないでしょうか。未来の私が先にザザーグ様に出会って、その後今の私が過去のザザーグ様に会えば、矛盾はなくなるはずなんです。将来のことを考えてもしょうがないのであまり悩むつもりはないんですが、ガダラルさんにはもっと考えろと怒られてしまいました。


 ガダラルさんはずっと私が帰ってくるのを待っていてくれたみたいで、冬用の薪干しとか、塩漬けにしてある野菜の移動とか、冬用の絨毯の取り替えとか、仕事をたっくさん用意しておいてくれました。あちこち旅してきて少し疲れているのですけど、明日から山程のお仕事が私を待っています。ガダラルさんに最初は文句を言うつもりだったんですけど、私が帰ってくるまで冬用の支度をしないで寒い家で待っていてくれたガダラルさんは、すごく私のことを信じていてくれたんじゃないかなと思ったら、何も言えません。

 アトルガンという国はすごくいろいろな色が使われていて、それなのに悲しい感じの街だと思っていたんですが、久しぶりに帰ってきてみるとすっかり乾いた街になっていました。冬になって色が褪せて元から乾いていた空気が、もっとカラカラになったみたいです。私が帰ってすぐ、ガダラルさんが冬は嫌いだって言っていましたが、私もアトルガンの冬はあまり好きになれないかもしれません。

 あ、こちらでも私より先に渡ってきた冒険者の人たちが星芒祭をやるそうです。あまり派手にはできないそうなんですけど、アルザビが少しは綺麗になるってガダラルさんが教えてくれました。少し嬉しそうなガダラルさんを見ていると、単にガダラルさんは派手な色が好きなだけのような気もします。
 明日から、お仕事はいっぱいあるので今日はもう寝ようと思います。もう一つどうしても伝えなきゃいけないことがあるんですけど、それはまた今度の手紙に書きますね。疲れたので、すごく眠くなってきたので。