お婆ちゃま、この間の手紙で書いたことを詳しく説明しますね。
 実はこの間ガダラルさんに、ちょっと遠いところにお使いに行ってこいって言われたんです。不滅隊の人が三国とジュノに親書を持って行くので、その案内をして、ついでに宿題を一つ片付けてこいってことでした。
 その宿題っていうのが、カーバンクル君以外とも契約を結んでこいってことで……
 いつかは契約したいなあって思ってはいたんですけど、私おっちょこちょいだし、怖いの苦手だし、絶対に無理だと思ったです。でもガダラルさんは、何のためにお前に色々教えてきたって言って、私の言うことを全然聞いてくれなくて。ルガジーン様は嫌なら行かなくてもいいって言ってくれましたけど、ガダラルさんは行きたくなくても無理矢理行かせるって、怒り出してしまいました。その後ガダラルさんとルガジーン様は夜遅くまでお部屋で言い争いをしてました、すごく大きい声で怒鳴り合っていて、怖くて眠れなかったんですが。二人とも私のことを考えているから本気で喧嘩してくれてるんだと思うと、ほんの少しだけ嬉しかったです。


 次の日朝ご飯を食べに来たミリ様にその話をしたら、勉強って言うのは机に向かって本を読むだけじゃなくて、色々見たり聞いたり失敗することも勉強なんだよって教えてくれました。失敗してもガダラルさんは怒らないけど、失敗するのが怖くて何もしないほうがガダラルさんは怒るだろうって。ガダラルさんに教えてもらって魔法もすごく上手になったし、もうあんな失敗はしないつもりですけど。
 でもやっぱり怖かったんです、またみんなを困らせるようなことをしたらどうしようって考え始めてしまうと。
 いっぱい考えても答えが出なくて、またあの木に登りに行きました。私が来ることをわかっていたんですね、ガダラルさんは。寒いのに窓を開けて待っていてくれました。ガダラルさんがくれた緑の外套はとても暖かくて、逆に眠る前だったので薄着のガダラルさんの方が寒そうでしたけど、久しぶりに二人で長くお話ができました。ガダラルさんは私の話を聞いた後で、自分の昔話を少しだけしてくれました。
 東部の戦線で蛮族たちと戦い続けたときの話です。
 あまり食べるものもなくて、どんどん自分より後に入ってきた兵の人が死んでいって、それでも頑張って頑張って。でも、自分がいくら頑張っても何も変わらないのが本当に悲しくて、もういつ死んでもいいと思ったこともあったそうです。でも頑張らないと、自分の側の人がみんな死んでしまう。それが辛くて辛くて、一生懸命戦っているうちに羅刹と呼ばれるようになって、弱音を吐いたり休む場所もなくなったときにルガジーン様に会ったそうです。だから自分を色々な意味で引っ張り上げて守って大事にしてくれたルガジーン様の事が本当に大切だけど、私のこともそれなりに大事でせめて一人で自分のことが決められるようになるまでは守ってやるってきっぱり言ってくれました。だから、ちゃんとやるべきことをして帰ってこいって。
 ルガジーン様の次の次くらいみたいですけど、ガダラルさんは私のことを信じて、大切に思ってくれているのがわかったので、私はお使いを受けることにしました。どうしてそこまで行かせようとするかわからないけど、ガダラルさんが私のことを考えていることは間違いないです、きっと。
 ガダラルさんが私を信じてくれるなら、私もガダラルさんを信じないと。


 この手紙を書き終わったら出発します。
 一緒に行く不滅隊の人たちとも昨日挨拶をしてきました。よく来てくれる人ばかりだったので、少し安心です。船に乗ってマウラについて、そこから少し長い旅になるそうですが、お婆ちゃまの所に寄るくらいの時間はありそうです。
 もしかしたらこの手紙より私の方が早く着くかもしれませんが、その時はお婆ちゃまに別な話をいっぱいしたいと思います。帰ってきたらアトルガンも雪がいっぱいつもってるんでしょうか、ちょっと楽しみです。






 それじゃあ、いってきます。